構造生物学とは?
構造生物学とは、タンパク質を中心にした生体高分子の分子機能(はたらき)を、その分子構造(かたち)から理解していこうとする研究分野です。タンパク質は、生理現象に直接関わり、生命の担い手の中心です。20種類のアミノ酸を基本ユニットとして、それらがペプチド結合によって鎖状につながってタンパク質は出来上がっています。つながるアミノ酸の種類・順序はすべてゲノム上に遺伝情報として書き込まれています。
すなわち、タンパク質は遺伝子を設計図として出来上がった生体ナノマシーンと表現できます。しかし、現実には設計図すなわち遺伝情報のみを読み解いても、タンパク質の働きを理解する事はできません。それは、タンパク質は一次元的な鎖としてではなく、三次元的に組み上がった立体構造をとって始めてその機能を発揮するからです。そのため、立体構造情報に立脚した構造生物学は21世紀の生命科学の大きな潮流のひとつになっています。
播磨研究所では、大型放射光施設SPring-8の4本の構造生物学ビームライン(BL26B1、BL26B2、BL44B2、BL45XU)を利用したX線結晶構造解析を中心に、構造生物学研究を推進しています。情報伝達、筋収縮、酵素反応などの生理反応に注目し、これらに関係するタンパク質構造を基盤にその機能を分子レベルで解明していく研究を行っています。これらに加え、膨大なゲノム情報を利用してたくさんのタンパク質の立体構造を網羅的に明らかにしようとする構造ゲノム科学研究も始めています。
これらの研究成果は、学術的な側面ばかりでなく、応用面すなわち高齢化社会に対応できるゲノム創薬(ゲノム関連情報に基づいた新薬の開発)やテーラーメイド医療(個人の遺伝的背景にあった薬の処方や治療)の早期実現、そして環境問題への貢献も期待されています。
理研ビームラインを用いて解析されたタンパク質の新規構造
DNA結合タンパク質AML1/Runx-1 Runt ドメイン/CBFβ/DNA複合体