物理科学について - 光を利用する


物理科学について - 光を利用する

SPring-8で開発された最先端光源・光学系を利用して、放射光利用の先端技術開発・先端応用研究を推進しています。

1000mビームライン応用研究

1000mビームラインでは、アンジュレータ放射光ビームの中心部の高可干渉領域を大面積にして取り出し、生体などの軽元素によって構成される物体のイメージング研究、回折イメージングによる結晶材料評価などの応用研究を推進するとともに、X線干渉計を用いた光子と重力の相互作用の研究などの基礎研究も進めています。
軟組織(植物の葉)のイメージング
植物の葉のコントラストイメージ(左)と吸収コントラストイメージ(右)。一般のレントゲン写真は吸収コントラスト像で、構成元素のX線吸収に差がない場合にはコントラストが生じません。一方屈折コントラスト法では小さな密度差(屈折率差)から高いコントラストを生じるため、軟組織のイメージングが可能です。

合成ダイアモンド単結晶の格子欠陥
1000mビームラインの大面積ビームを利用した回折イメージング法で見た合成ダイヤモンド単結晶内の格子欠陥。超光干渉性の大面積ビームを使えば、線状の転移と面上の積層欠陥が高分解能かつ短時間で観察できます。

大型分離型X線干渉計
光子と重力の作用を測定するための大型分離型X線干渉計。標高の異なる光路を通った2つのX線ビームの微小な位相差が検出されます。

27mアンジュレータビームラインの利用研究

分離型X線干渉計 楔型位相板による干渉縞
平成12年10月に完成した27mアンジュレータビームラインでは、X線の干渉性を利用した様々な新しい計測方法の開発が進められています。また、レーザー光と放射光を同期させた非線型光学研究、15テスラ強磁場下での磁性体の構造や物性の研究、放射光と走査トンネル顕微鏡を組み合わせた表面研究などが計画されています。 ビームライン完成直後に1000mビームラインでの分離型干渉計の小型モデルのテストが行われ、世界ではじめて完全独立二結晶分離型干渉計での干渉計測に成功しました。

分離型X線干渉計の光学配置概念図

軟X線ビームライン利用研究

軟X線アンジュレータを光源とするビームラインを建設中です。この軟X線ビームラインの研究対象には、酸素・炭素・窒素・リン・シリコン等の生物にとって最も重要で基本的な元素ばかりでなく、人間が現代生活を営んでいく上で重要な機能性物質、たとえば、コンピュータ等の電子機器に使用される半導体などの材料として多用されている還移金属や希土類金属などの元素も含まれています。これらの元素を対象に、半導体や超伝導体、タンパク質を含む生物試料等の多種多様な物質の電子状態を探り、人間にとって欠かせない物質科学の基礎研究を推進します。

軟X線領域の光では、世界と比較しても、SPring-8光源が強いことがわかります。
SPring-8の挿入光源と世界の光源との輝度の比較