三木生物超分子結晶学研究室の講演

最近タンパク質結晶学の分野において、長波長領域のX線を利用した位相決定法が注目を集めている。
これは、タンパク質中のメチオニン残基やシステイン残基に含まれている硫黄原子の異常分散効果が長波長領域のX線に対して強まる性質を利用して、native結晶のみにより実験室系X線源を利用したSAD法によって位相決定可能であることを示した最近の成功例が契機になっている。しかし実際には、硫黄からの異常分散効果は2A付近のX線波長に対してもΔf″?1 e-程度と微弱なために、 高分解能・高重複度回折、低放射線損傷などの様々な条件が揃わないと位相決定に至ることは困難であり、 現在までに汎用的な方法になっているとまでは言えない。そこで、我々はヨウ素の持つ性質に着目した。 ヨウ素原子は波長2A付近のX線に対してもΔf″≈1 e-程度の強い異常分散効果を発生するため、 効果的にヨウ素誘導体結晶を調製できれば、実験室系のX線源(λ> 1.54 A)などによっても位相決定できる可能性が高まり、「ストラクチュローム連携研究」などに代表される構造ゲノムプロジェクトにおいて必要とされる迅速構造解析に寄与することは勿論、 一般の構造生物学研究にも寄与することが期待される。しかし、ヨウ素を結晶中に導入する従来の方法としては、ソーキング法、共結晶化法、遺伝子工学的手法が知られているが、それぞれ一長一短あり、決定的に有効な方法はないのが現状と思われる。
そこで、我々はより確実にヨウ素誘導体を調製するために、ヨウ素の蒸気拡散する性質を利用した、Vaporizing Iodine Labeling (VIL)法を考案した。 VIL法では、ヨウ素が気相状態で緩和に目的結晶中に導入されるため、ソーキング法と比較して様々な長所を持つが、調製の際に浸透圧ショックによる結晶性の損傷が少ないのもその一つである。
また、VIL法では結晶中のチロシン残基が選択的にヨウ素化されやすいため、位置特異的にヨウ素ラベルされた、良質な重原子誘導体結晶が得られることが多いと考えられる。 当日の講演では、VIL法によってヨウ素ラベルおよび位相決定されたいくつかの例を挙げ、その詳細について紹介する予定である。

日時 2005年9月29日(木) 16:00〜 (終了しております。)
演者 宮武秀行(生物超分子結晶学研究室)
演題 ヨウ素誘導体タンパク質結晶を調製するための新規な方法
連絡先 RMF世話人まで(城生体金属科学研究室:菊地 PHS3360)

前のページに戻る