RSCセミナー 光科学がもたらす細菌研究の展開 報告

平成24年11月2日(金)に、オランダWageningen大学・Laboratory of Food Microbiologyの大学院生ら14名による訪問の折に、 本セミナーを開催しました。城 副センター長による開会のご挨拶の後、Dr. den Besten HeidyからWageningen大学・Laboratory of Food Microbiologyの概要の説明がありました。その後、Wageningen大学側、SPring-8側の各4名から、研究発表をして頂きました。 Wageningen大学の発表は、細菌の、ストレス(酸や熱)に対する応答や、ストレスによって傷ついた細胞の修復に関するもの、及び、 酸・熱・抗生物質から保護するために細菌自身が産生するバイオフィルムに関するものでした。何れの研究も、酸や熱で処理しても細菌が根絶しない 理由を微生物学的・分子生物学的に明らかにし、食品製造現場で活かすことを最終目的としています。SPring-8側からは、それに関連する話題として、 細菌のストレス応答に関与している蛋白質(熊坂博士)、及び、抗生物質耐性に関与している蛋白質(的場博士)の構造生物学的研究を発表して頂きました。 さらに、庄村博士からは、微生物による水素の発生と吸収に関する酵素(ハイドロゲナーゼ)の構造と、エネルギー産生への応用に関する話題を提供して頂きました。 私からは、細菌といえども未だに多数存在している、機能の予想すらできない機能未知蛋白質の機能発見に焦点を当て、高度好熱菌プロジェクトの概要を説明しました。 機能未知蛋白質の多くは生物種間で共通しているので、それらの機能を発見できれば、食品から細菌を根絶する新しい方法や、 細菌を産業に応用する新しい方法を開発できる可能性があります。最後に倉光グループディレクターによる閉会の辞をもっ会を閉会しました。 Wageningen大学の研究とSPring-8の研究は、手法や目的が異なっており、しかも、セミナー参加者は30人程度と少なかったにも関わらず、 各発表に対する会場からの質問も多く、特に、細菌のストレス応答に関して活発に議論できました。 また、Wageningen大学の学生らは、本セミナーに参加したこと、SPring-8/SACLAを見学したことで、構造生物学への関心がさらに高まったことと思います。 今回のような、専門分野が若干異なる研究者同士の交流から、近い将来、研究のブレークスルーが見出され、さらに、新しい研究テーマが生まれることを期待しています。
座長:Hasmik Hayrapetyan (Wageningen Univ.)、新海 暁男(理研)
プログラム
9:30 ~ 9:45 開会の辞:城 宜嗣(理研・放射光科学総合研究センター 副センター長)
9:45 ~ 10:00 Heidy den Besten (Wageningen Univ.)
"Overview of the Laboratory of Food Microbiology of Wageningen University"
10:00 ~ 10:20 Nitesh Kaushik (Wageningen Univ.)
"Physiological state of bacteria under stress"
10:20 ~ 10:40 熊坂 崇 (JASRI、理研)
"Structural basis for general stress response in Bacillus subtilis"
休憩
11:00 ~ 11:20 Karin Metselaar (Wageningen Univ.)
"Mechanisms of non-linear inactivation"
11:20 ~ 11:40 Yu Zhao (Wageningen Univ.)
"Lifecycle of thermophilc biofilm formers"
11:40 ~ 12:00 的場 康幸(広島大学、理研)
"Structural studies on the bleomycin resistance determinants"
集合写真撮影
昼食
13:30 ~ 13:50 庄村 康人(兵庫県立大学、理研)
"X-ray structure analysis of the hydrogenase: a study toward the application of the enzyme to the fuel cell and photosynthetic H2-production"
13:50 ~ 14:10 Alicja Warda (Wageningen Univ.)
"Spore sublethal damage repair mechanisms"
14:10 ~ 14:30 新海 暁男(理研)
"Whole cell project of Thermus thermophilus HB8: toward functional identification of functionally unknown proteins"
14:30 ~ 閉会の辞:倉光 成紀(大阪大学、理研)

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